時々康駿    第14回(2012.8.31.)       

 オリンピックが終わり月が変わる頃になると、流石に熱は冷めてくるものだ。それでもテレビ局はしたたかに新しいスターを作ろうと必死である。
 オリンピックが4年に一度というのは、これ以上の戦いは見られない!ということも観る側は知っておかなければならないのだ。
 暇に任せテレビの番組表を検索していると「競技スポーツ中継」と「健康番組」が多いことに気づいたので、今回はそのへんの内容を、寄り道しながら書こうと思う。

 4月からJUVYの若手も見ているが、彼らの目標がどこにあるかわからなくなることにしばしば出くわした。一応「競技スポーツ」に足を乗せているのだろうが、時々秤から足を外すことがあるようだ。若いから健康問題は考えていないのが当たり前と言えば当たり前なのだが、「競技者だろう、お前」と言いたくなることは日常茶飯事なのだ。
 佐野高校教員時代の頃と比較するのは社会情勢の変化からして乱暴なことは承知の上で言うのだが、物差しの単位が尺貫法からメートル法に変わったのか?と思うほど感覚がズレていることがある。
そもそも物差しというものは普段は使わないで、鴨居か何かにかけておき、必要な時に取り出して正しい基準を確認するものなのだ。だから、計測に誤りは生じないもの、のはずだ。何度も言うが、それなのに狂ってきている。鴨居にかけられているあいだに竹が曲がって狂ってしまったのだろうか?

 いや、そんなことはない。
それではどうしてそのようなことが起こってきているのか。
「見本になる選手がいない」
気がついたのはそのことだった。
見本といっても「フォーム」でもなく「あこがれ」でもない。仲間の中で「見本になれる人間」である。昔は「学習」「競技」「礼節」「遊び」何でもござれの若者がおり、「伝説の人」として、後輩たちに無言で教えていたのだが…。

 ここで言葉の計算をしてみる。簡単だが難しい。
分数を考えて欲しい。
分母を自分とする。分子も自分とすれば現状での答えは1である。
今の自分を分母とする。過去の自分を分子にしたら答えは1以上か、1以下か?未来の自分は?
少し難しくする。
分母を他人にしてみる。もちろん分子は自分である。分母を誰にするかはあなた自身が考えればよい。数分考えれば解答はでる。ただし数字で表すことはできない。それでよいのだ。この計算は。
ところが、分母を誰にしたらよいかわからない。これが私が4月から指導を初めて行き詰った最初のことだった。
私だけの問題で考えれば昔の選手を分母にできないことはない。残念ながらその方法は私にとっては簡単に答えを出せるが、その答えを子どもたちに伝え、有効活用させるには困難だから、使えない。
やはり「見本になる選手」の出現を待つしかないのである。そうすると、いわゆる伝統の再構築というものが出来るかもしれない。
佐野高校を例に取れば、昭和の時代に昇りつくところまで行ってしまった。行くところまで行っちまえば、これは枯れるしかない。永遠に勝ち続けるなんてことは不可能だ。そんなことは歴史が証明している。人類はそうやって生き延びてきているんだから。よく「監督の力量で」などと口にする人もいるが、監督の問題ではない。要はぐんぐん成長し実を蓄えた植物も必ず終わりが来るということ。一度枯れてしまったものに実をつけろと言っても、それは無理というもの。畑を耕し、種を蒔かなければならない、なんてことは誰にでもわかる。
「見本となる人間」の出現こそ新芽なのだ。そのような人間は「競技力向上」も「健康増進」も日常生活の中に何気なく、特化することもなく、力むこともなく、同居しているはずだ。
そのような選手の出現はオリンピック代表選手を生むより難しいことをつくづく実感しはじめている。

 マスコミだけでなく大学の研究室でも「競技スポーツ」と「健康」に偏る傾向が強くなっている(北海道大学矢野徳朗教授)という。
「指導者」「教育実践者」「研究者」らが合同会議を開催し、相互理解のもと日本の健康・体育・スポーツを推進しなければ大変なことになる。
実は私が分母にしてきた「見本となる選手」は若かりしころから己の脳内では信じられないくらいの問題解決能力を有していた。一人で上述の会議を行っていたのではないかと思えるくらいに。

 「スポーツは『する』『みる』『知る』『支える』」などといった言葉で納得させる時期は終わってはいないか?「健康」を一人歩きをさせているようなスポーツ観ではマスコミにやられっぱなしだ。マスコミとの共存共栄は「競技スポーツ」と「健康」だけではいけない。このままでは、部活動やクラブチームの将来は「勝利至上主義者」の思惑通りに進んでいくのではないかと心配だ。
まあ、私が心配しても解決はしないのはわかっているけれどね。
そんなことより「示範ができるまで現場に起とう!があと何年?」を心配したほうが現実的だ。
そんなオチで今回は流局。






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