時々康駿    第17回(2012.10.17.)       

 国体の帰りに関ヶ原〜彦根〜安土〜飛鳥を廻った。そのことは前回書いた。今、薄茶色になったある文庫本を読んでいる。1978の発刊である。「火の路」飛鳥を舞台にした松本清張の作品である。
旅から自宅に戻り、書斎の周りを見回した。今回の旅で印象に残った地に関連する書籍をもう一度読み直そうと考えたからである。まずは司馬遼太郎の「関ヶ原」が目に付いた。次いで同じく司馬の「国盗り物語」こちらは安土城関連。梅原猛の「万葉人と詩の心」あたりを手にとったが、「万葉人…」は重すぎるので後ほどに、と返却。安土城だけでは…、ということで「国盗り…」もパス。「関ヶ原」を読んでみようか、と決めた途端に「そういゃ、栗原小巻が主演したNHKの『火の路』の原作本があったはずだが…」と探していたら、パソコンの裏側にあった。
早速出してみるとこちらのほうが面白そう。というわけで読み始めまもなく一ヶ月。上下2巻とは言え、昔と比べペースが遅い。明日には読了しそうだが。


 「火の路」を読んでいて思ったことは、おおよその内容、例えば「ゾロアスター教」「益田岩船」「酒船石」などが「高須通子」中心に展開する、ことは記憶にあった。しかし、こんなことも書いてあったのか、と思うことばかりである。例えば、今回の旅で行った場所が全て登場している、関ヶ原、彦根、安土、京都、樫原神宮、大和三山などだ。そんなことは全く覚えていない。


 「火の路」読了前にもう一度本棚を見直した。「これからは本は買わずに、残りの人生で再読し、推薦図書を遺言にする」などと馬鹿なことを考えている自分に気がついた。そう思ったとたん「私一人の親鸞」(古田武彦)を手にとっていた。直近の講習会で「宇宙の真実に基づいたスプリント指導」について思い当たることがあったからだ。


 奧澤蔵書、1500冊を超える本が愛しくなってきたが、全てめんこく再読するにはどれくらいの時間がかかるのだろうか。今の生活では無理だ。そうなると「百姓」「家事」「寅(映画ですね)」「酒」そうそう「JUVY」などにかけている時間を少しずつ再読のための時間に回さなければならない。
実は退職後も本は少しだが購入していた。4〜9月までの6ヶ月で12冊読んでいる。やはりこの生活では月2冊が今の自分のペースということになる。しかし、このペースでは余命ですべての本を再読することなど不可能だ。40年かかってしまう。第一読むペースは年とともに落ちてくるのが自然であることは、ここ最近特に自覚している。
よし、つまみ食いをしよう。と、目に付いた本をペラペラとめくって斜め読みをしてみると、集中して読み始めてしまう自分が怖い。


 脳は偉大な肉体である。ところがその偉大な脳が一度読んだことをいとも簡単に忘れている。というより、一度きりしか読んでいない内容をどこまで脳は覚えているのか、と発想を転換させたほうが面白そうだ。
それでは、体験したことや学んできたことはどこまで脳に蓄積され、言動に影響を与えるのか、と考えてみた。やはりサランラップ理論だ。そう、記憶は透明なラップのごとく脳内で重なり、人は誰でも気づかないうちにその中の一枚を取り出して意思決定をする。つまり、行ったことのない場所に土地勘などはないという事だ。
ズバリ、脳なのだ。面白く生きるということは脳との共存なくしてありえないのだ。ちょっとおかしな表現だが、感覚的にわかって欲しい。


 ここで学校の先生にとって怖い話をひとつ。
適当に教えたことなど、生徒の脳に蓄積するわきゃねえだろう。多くの生徒は教師に教わってるのではなく、教科書に教わっているんだから。自分の話したことは全て生徒は覚えている、なんて考えている教師は平和なもんだ。
「怖い話じゃない、面白い話ではないですか」という感想を言う方を私は好きだ。


 こんなことを書きながら、目が本棚に向いた。
「酒飲みの自己弁護」(山口瞳)、「酒・はる なつ あき ふゆ}(佐々木久子)、「男の酒と肴ウンチク学」(古谷三敏)、「包丁ごよみ」(池波正太郎)の四冊である。学校の図書館のように作家別、ジャンル別に分かれている我が家の本棚に一箇所にまとまっているゆえ、視界の中にズバッと入ってしまったのだ。
もう少し書きたいのだが、まもなく6時半。風呂も湧いているし。「火の路」と「缶ビール」を持って風呂場に向かうことにする。
なんせ、再読には時間がかかる。風呂の時間も酒飲みの時間も有効に使わなきゃね。






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